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| 2005.06.08 |
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この春、コンドミニアムの管理会社がバス会社に委託して、居住地帯から M
ショッピングセンターまで、1日4往復のシャトルバスを出すようになった。バスといってもベンツの大型バンで、補助席まで使えばようやく10人ちょっとの座席があるくらいの大きさ。市街バスに比べると時間がかなり正確なのがうれしい。 |
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| ある日の午後、別の場所で用事を済ませ、電車を乗り継いで M ショッピングセンターまでやって来た。ここのバス停なら、管理会社のシャトルバスか、市街バスか、どちらか先に来た方で帰ることが出来る。 バス停に着いたのは午後2時2分過ぎだった。15分待ってもどちらのバスも来ない。 ― 管理会社の2時の便はもう行っちゃったんだな ― 市街バスは、たてまえ上は30分おきに出ることになっているが、実際は1時間に1本あればよい方である。しかし管理会社の次の便は午後4時だ。それまでには市街バスが来るだろうと踏んだ。待つことにした。 …… ………… ……………… 随分待ったが、全然来ない。 おかげで読書がはかどる、はかどる。 時間は…… ― え? もう3時40分!― あ、けどそれなら管理会社の4時便がもうすぐだ♪ 待ってましょ。 それにしても、市街バスの全然来ないこと。 ……。 …………。 ………………。 今にも雨が降ってきそうな空模様。バス停からはひとり、ふたりといなくなり、ついに私ひとりになった。4時を20分過ぎたが、時間に正確なはずの管理会社のバスも来ない。 もぉ〜、これだ。しょせん、マレーシアの運行会社だもんな〜。 市街バスと、本質は似たり寄ったりなのかもね。 |
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携帯を出してコンドの管理事務所に電話する。 「もしもし、アナさん? 私、コンドの住人。今ショッピングセンターにいます。今日は管理会社のバス、運行してないの?」 「今日は月曜日だから……、運行してるはずよ」 「あ、そ〜。今4時便待ってるんだけどまだ来ないんですよ」 「あら、ヘンね。運転手の K さんに電話してみて。番号はね、○○○……」 「どもありがと」 しかし運転手にしたってな〜 所詮マレーシアの運転手だもんな〜。 |
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携帯で、ぴぽぱぴぽ。るる〜。 「K さん? 私、○○コンドの住人。今ショッピングセンターにいるんですけど4時便まだですか?」 「『マイ・フレンド』に問題が起きてすごく大変な状況だから車動かせない」 ほら出たぞ! やっぱりそんなことか。 「ひょっとして……、2時便も来なかった?」 「行けなかった。午後一番に問題が起こって」 「でもあなた今仕事中なんでしょ?(なんでフレンドのこと優先する の?)」 「そうなんだけど、動けないものは動けない」 「あ、そ。もういいです。サンクス・エニウェイ」(とても、とても冷たい口調) こうなったら他の交通手段で帰ることにするが、この体たらくはコンドの管理事務所に知っておいてもらわなければならない。即、電話。 「あ、アナさん? さっきはど〜も。運転手ったらこれこれこんな理由で仕事できないって言うんです。信じられない!」 「まぁ本当。ごめんなさいね。彼のボスに苦情言う? 電話番号あげるから」 「おお、それはいい考えですね。番号くださいな」 さあ、モンク言ってやる〜〜〜〜〜といきまいてボスに電話したら、こっちから、名乗った次のひとことを言う暇も与えず 「今運転手から連絡入って指示したところです。5分後にそこに行きますから待っててください」 ― ??? ― 「は? あ、そ? ハイ……」 |
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果たして、ホントに5分後に現れた運転手 K さんは見るからに不機嫌そうだった。 ドアを開けて形だけの挨拶をしたらいきなり 「今ボクに電話した?(怪訝な顔)」 「ううん、今ならあなたのボスに電話した(マイッタカ)」 途端にとても悲しそうな顔になった。 「マイ・『バン』に問題が起きて動けないから車取り替えて来たんだよ」 ― は???? ― ……、あの〜、今、なんておっしゃいました? マイ・「バン」??? マイ……「フレンド」じゃ、なくって ……??? 「……、このバンは……?」 「これは代車。いつものと型は同じだけど」 よく見たら、いつものバンは窓にコンドの管理会社の名前が書いてあるが、この車はそれがない。 「あの〜、問題起きたのは……あなたの『車』??? (トモダチじゃなくって?)」 「そう。途中の修理屋さんに預けてきたんだよ」 …… あちゃー……。。。 車の中で小さく小さく小さくなった。つもり。 えへん。 意味のない咳払いをして、携帯を出してコンドの管理事務所に電話する。 「えーーー、アナさんいます? 私、そちらの住人」 「彼女今電話中なので、あとで折り返し電話します。携帯番号ください」 「ハイ、番号は○○○……。アナさんに、どうもありがとうって言ってください。それで彼女、わかると思うから。けど電話はくださいね」 …… 車内には気まずい空気がどどーーーーーーんとどよめいていた。 K さんもむっつり。こころなしか運転が荒い。 「あれがボクの故障した車だよ」 途中の修理屋さんを指さして教えてくれる。バンの窓に管理会社の名前がはっきり見えた。 「あ〜、そうだね……たしかに」 バツが悪い。まだ謝れない。 雨がざーざー降ってきた。 |
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空気が重い。追い討ちをかけるかのように雨がバンの窓を叩く。 いいかげんコンドに近くなった頃に携帯が鳴った。アナさんだ。よし、K さんに聞こえるように、大きな声で言うぞ。 「あ、アナさん? 私今、K さんの運転で、コンドに向かっているところ。私の誤解でした。本当はね、K さんの『バン』に問題が起きて、動けなくなって、 彼、車をとりかえて来てくれたんです。お騒がせしてごめんなさいね。ヘルプをありがとう」 「あ〜、よかったわね、どういたしまして」 雨は止まない。コンドの近くで K さんは、客が降りて濡れにくい位置を探して車をつけてくれた。 さ、ちゃんと言わなきゃ、大きな声で。 「来てくれて、ありがとう」 K さんが振り向いた。 「誤解しちゃって、ごめんね」 にこーーーーーーーーっと笑みが浮かんだ。本物の笑顔だ。よかった。嬉しそうだ。 「車、早くなおるといいね」 私は、この「バン」ってやつのスライドドアの閉め方がヘタだ。いつも一発でちゃんと閉まったためしがない。このときも、1回、2回、3回目でやっとどうにか閉まった。K さんが車の中で 「またか〜……」 と、大笑いしていた。 |
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| バンが故障して、運行会社が代わりの車なり運転手なりを即手配しなかったことはいただけないが、K
さん自身は誠実に仕事をしていた。ベビーカーを持った赤ちゃん連れのお母さんには運転席から出てきて手を貸してくれる
K さんだ。 なぜあの時素直に「素(す)」の耳で K さんの言葉を聞けなかったのだろう。電話する前から、○○○人とはこういうものだと頭から決めてかかっていた。しなくてもいい大きな誤解をした。巻き込む必要のない人まで巻き込んで大騒ぎした。 色眼鏡で人を見たことを、恥じ入った。 どどーーーんと自己嫌悪に、陥った。 |
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数日後、新聞で知った。この時期、ディーゼル燃料が国内で危機的に不足していた。市街バスはルートによっては大幅に間引きせざるを得ない状況だった。あのまま市街バスを待ち続けたとしても、おそらく全然来なかっただろう。 あれから随分管理会社のバスを使っていない。 また近々出かけてみるか。 |
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| (本文 完) |
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