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32 大当たり!(後編)

クアラルンプール マレーシア

2005.04.03





 3日後、外出中に携帯が鳴った。

 女性の声で
「○○電器店です。ご購入されたホームシアターですが……」
「はいはい」
「本日お届けできます」
「今日は家にいないので明日にしてください」
「何時がよろしいですか」
「午後3時がいいです」
「それでは、明日午後3時にお伺いします」
「よろしく」

うむ、なんだかいいぞ。ここまでの対応。
と思ったら、5分もしないうちにまた携帯が鳴った。

「○○電器店のアハマドです」
「あ、こんにちは」
「本日午後5時過ぎにお届けできますが」

……だーーかーーらーーーー。

「今日は家にいないので明日にしてください」
「何時がよろしいですか」
「午後3時がいいです」
「それでは、明日午後2時か3時にお伺いします」
「えっと、3時きっかりにお願いします」
「はい、では、2時か3時に」
「いえ、あの3時きっかりに」
「かしこまりました」

……、大丈夫か?

 また人が変わって3度目の電話があるかと半分期待したが、その日はそれっきりだった。



 そしてお約束の当日。
午前10時、アハマドさんから確認の電話が入った。

「○○電器店のアハマドです」
「はい、おはようございます」
「本日午後2時か3時にお届けします」
「は、あの、3時きっかりにお願いします」
「かしこまりました。では2時か3時に」

……。

 結局来たのは3時10分。上出来だ。拍手を贈ろう。何時間も遅れたり、連絡もなく来なかったりはここでは頻繁にあることだ。しかもやって来たに〜さんふたりは、この暑い中、きちんとネクタイを締めてちゃんと日本式おじぎをする。すばらしい。

 ダンボールを解いて、てきぱきと作業を始めたが、そこで一発釘を刺す。

「シリアル番号を確認させてください」

14桁のその番号を、以前の欠陥品のそれとくまなく照らし合わせる。よし、新しい製品だ。

 に〜さんのうちひとりが配線に、もうひとりがスピーカースタンドの組み立てに取り掛かった。と思ったらスタンド担当のに〜さんからこんなひと言。

「プラスドライバー貸してください」

ん? 持ってきてないの? 商売道具なのに?
……はいはい、お貸ししますよ。減るもんじゃなし。

組み立ての終わったスタンドにスピーカーをくっつけるのは一番後回しにしてもらい、配線だけ先に完成して音の確認をする。
準備完了、スイッチ、オン。

 おおおおおおおおおお〜〜〜

マトモだ。
車は前から後ろに走って行くし、ライブ会場ではちゃんとステージに向かって立っている自分。かんど〜。

 いやいや、コレがふつーなんですけどね。

 すっかり満足してに〜さんに仕上げのお願いをする。
「じゃ、スピーカーをスタンドにくっつけてください」

 それまではとてもスムーズに作業していたふたりだが、この単純作業になって、あーでもない、こーでもないとなにやら苦労している。

 しばらくして、配線担当のに〜さんが振り返って平然と言った。

「付属のねじが短すぎるようです。
もう少し長いねじを買ってきてください

……

ピキピキッ!(ひきつる音)

……
…………
………………

最初から今まで、どんなにボケかまされてもつとめて寛大によく解釈し、耐え忍び、対処してきたが……、
最後の最後になって……、

ねじを?
買って来いぃ〜〜〜〜〜?

もうダメじゃ。爆・発〜!!!

「なんでそんなもんだけ買わんといかんのじゃ〜〜〜!
私は中古品を買ったのではな〜〜〜〜〜〜い!
ちゃんとしたねじ持って出直して来なさ〜〜〜い!」

 ― ??? ―

なぜこの客はこんなに怒ってるのだ???
不思議そうに顔を見合わせ、に〜さんふたりはおたおたしていたが、どちらからともなく付属の「短い」ねじでなんとかしようと頑張り始めた。そしたらおお! たった5分でどうにかカタチになったではないか。

 やればできるじゃない。というより、短い(と思い込んだ)ねじの使い方が間違ってただけなんだろう。そんなことでカンタンにギブアップして画竜点睛を欠いちゃだめよ。

 ふたりはめでたく顧客サインをもらえてお店に帰っていった。見送ったあと、アハマドさんに電話する。おっとその前に、プラスドライバーをちゃんと返してもらったかチェックして、と。

「終了しました。どうもありがとう」



 日本のお店でなら5分で済むところが40分以上かかったり、たった一つの真実や約束を伝えるにも複数の手順を踏んだりしなければならなかったが、それでも今回の○○電器店の対応は、良い方であった。

 安くないお買い物。
 実にスリリングでしょ。



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