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17 埋單(マイダン)

クアラルンプール マレーシア

2002.10.27





 ウォーミングアップです。本文とは関係ありません。いずれもクアラルンプールで見る漢字の言葉です。意味は何でしょう?

1.楽天小熊餅
2.汽車美容服務中心
3.早安少女隊

  答えはこちら



親指

 中央郵便局に行った。入ってすぐのところに看板がある。

― 御用の方は番号札を取ってお待ちください ―

 近くにいたマレーのお姉さんに尋ねた。
「番号札ってどこでもらえるんですか?」
無言で微笑んで、彼女は右手の「親指」でちょっと離れた所にある番号札発行機を指し示してくれた。

 イスラム教徒のマレー人が人や物を指すのに使うのは必ず「親指」である。人差し指はアッラーの位置を指す指なので、それで人や物を指すことは神を冒涜することになるのだそうだ。

 極力まねして人差し指を使わないように心がけていたら、けっこう習慣化してくるものである。全くその必要のないチャイニーズ系の店でも、気がついたらメニューを親指で指していたりする。

 今度日本でついこれをやってしまっても、あたたかく見守ってほしい。



マクドナルド

 マクドナルドで食べ終わったら普通何をするか? 日本のよいこ達の答えはこうだろう。

「トレイを片付けま〜す」

 しかしマレーシアでこれをやってはいけません。お客の残したトレイを片付けるお仕事を専門にしている人が必ずいるからです。客がこれを自分でやってしまうと、彼らの仕事を横取りすることになります。食べ終わったら何もせずにそのまま去るのがマナーです。

 今度日本でついそのまま去ってしまったら、いや、その前に、誰か注意して。



埋單(マイダン)

 マレーシアの華人は福建出身の人々の子孫が一番多く、福建語(ホッキン)が幅を利かせているが、クアラルンプールに限っては広東語(カントニーズ)が広く通じている。



 余談。

 ショッピングセンターでバスを待っていたら、カントニーズで話しかけられた。たぶんバスの番号と行き先を聞いてるんだろな、と想像はつくが、わからん。首をよこに振ったら
「あんた……、マンダリン?」と聞いてくる。
「ううん。ジャパニーズ」と初めて言葉で答えたら
「へっ? マレーシアンじゃないのぉ〜!?」

 これが一度や二度のことではないので、さすがに三回目には尋ねてみた。
「私、チャイニーズマレーシアンに見えます?」
「Definitely! (もっちろん!)」

……ここまで言うか。

すっかり街に同化してきたかな……。



 チャイニーズの屋台やレストランで食事してお勘定を頼む時は、カントニーズで
「まいだん!」と言えばよい。もしかしたらマレー系やインド系の店でも通じるかもしれない。

 同時に、「埋單(マイダン)」を表すジェスチャーがある。右手の人差し指と親指の先をくっつけて「影絵のきつね」の形を作って、空中で左から右に文字を書くように10センチほど動かせばよい。ペンを持ってサインする仕草だ、という説もある。遠くにいる店員さんにマイダンを頼む時に実に便利だ。

 今度日本で……

 やめとこ。

 


"Good evening !" の境界

 チャイナタウンから午後3時半発のバスに乗って自宅まで帰ってくると4時をまわる。

― 喉かわいたなぁ。「グロリアさん」でグァバジュースでも飲んでいこ ―

店に入ると店員さんたちが笑顔で口々に言う。

"Good evening !"
"Good evening, Miss !"

さいごの "Miss"(お嬢さん!)のワザトらしい『気配り』におだてられて、つい何度も足を運んでしまうのである。この店は、だから好き。

 ところでこの "Good evening !" という言葉。英米では、夕方、夜のあいさつとして使われると習った。自分としては、太陽が西に傾いてあたりが薄暗くなり始めないと「夕方」という気分になれないのだが、ここ、北緯3度で暮らしていると、「たそがれ」とか「薄暮」という言葉にふさわしい時間帯は、ほとんどといっていいくらいない。年中、午後7時過ぎまで明るくて、ものの15分もしないうちに、さぁーーーーーっと暗くなり、夜になる。午後4時なんて、まだまだまっ昼間である。

 彼らはいったい何を基準に "Good evening !" と言うのだろう? いろんな時間に、いろんな所の「グロリアさん」に行ってみたところ、"Good evening !" を聞いたもっとも早い時間は、なんと午後2時半であった。太陽の動きとは関係なさそうだ。

 マレー語では、時間帯によってふたつの午後のあいさつの言葉を使い分ける。正午から2時頃までと、2時頃から日没まで。
前者は「スラマッ・トゥンガハリ」
無理やり英語にしてみると "Good noon." とか "Good midday."
後者は「スラマッ・プタン」
こちらは "Good afternoon and evening." ってなところだろう。

 午後2時ごろという時間はざっくりと、一日5回のイスラム教のお祈りの、第3回目の終了時間にあたる。もともとマレー語の概念とは違う
"Good afternoon." と "Good evening." を、便宜上その時間を境に使い分けている、と考えればつじつまが合う。

 けれどこれはなじみにくいな……。
 
 今度日本で午後2時半に「こんばんは」と言ったりはしないから、どうぞご安心を。


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