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06 中秋の月餅

クアラルンプール マレーシア

2001.10.01





 8月、一時帰国を終えてここに戻ってきた時、町の様子が以前とは違って見えた。

 至るところに、マレーシアの国旗のオンパレード。

 道路の真ん中。
 ずらずらずら。

 タクシーや民間車の屋根の上。多いのは1台に4つ、つまり屋根の四隅に小さな国旗を立てて、ひらひらさせながら走っている。

 高層ビルやコンドミニアムのてっぺん。
 ショッピングセンターのまわり。
 民家の洗濯物干し場。
 どこもかしこもひらひらひら。

 8月最終週には、毎日のように午前10時ごろ、近くを小型飛行機が低空飛行するようになった。現在のクアラルンプール(の経済発展)を象徴するツインタワーでは、パラシュートをしょって飛び降りるのを競う催しなども行われていたようだ。着地に失敗して怪我人が出たりもしたとか。

 これらは全て、8月31日のマレーシア独立記念日(祝日)の前行事だった。当日はツインタワー前の公園での深夜のカウントダウンに始まり、花火の嵐。早朝には、独立広場での大式典とパレード。テレビを見ていたら、マハティール首相が片手を振り上げて
「ムルデカ〜〜〜〜〜!(独立〜〜〜〜〜!)」と叫ぶと、
人々がいっせいに
「ムルデカ〜〜〜〜〜!」と呼応していた。

 ― すごい一体感 ―

 半月以上も前から町中を国旗だらけにして1週間前から半端でない規模で祭典が進められる。16世紀以降、オランダ、ポルトガル、イギリス、戦時中の数年間は日本、などに支配され続けてきたこの国の人々にとって、44年前に独立したことの意味は計り知れないくらい大きいのだな。(しみじみ)



 ムルデカの日を境に、国旗は徐々に減り始め、
 ― いっぺんに撤去はしないんだな ―
かわりに「ちょうちん」を見かけるようになった。華人社会の中秋の準備である。

 伝統的なちょうちんは赤くて丸いが、数は少なく、簡易ちょうちんの方をよく見かける。てっぺんと底が堅い紙で平たく、その間がアコーディオンプリーツ状態になっているものだ。吊るさなければコンパクトにまとまり、吊るしたらびよよ〜〜んと伸びきって、きれいな円筒形になる。

 色も実にカラフル、と言うか、「ど原色」。どみどり、どきいろ、どピンク……、などが、中華系の店とか、コンドミニアムの入り口や守衛さんの詰所などをにぎやかに飾っている。

 同時にやたら目に付くのが月餅。

 今まで中国の事物に関してあまりにも無知だった私は、過去の認識を改めてばかりいる。月餅もしかり。日本では新宿中村屋とか、スーパーで売っているヤマザキなどの月餅しか知らなかった。あれはあれで、おやつにひとりで一個食べるにはよかろう。

 しかしこっちのはでっかい。直径8センチ、高さは4センチもある。どう見ても「ひとりで一個」食べるものではない。

 中味は、「蓮の実のあんに、玉子の黄身が一個まるごと」が基本で、それに様々なバリエーションがある。
 黄身が二個
 ひすい色のあん
 あずきあん
 ナッツ入り、などなど。

 華人社会では、仲秋(陰暦8月)の2週間余り前から友人知人の間で月餅を贈答するそうだ。

 私も、ある華人から友人を介して間接的に頂いた月餅を熱いお茶と一緒に8分の1個食べてみた。切り口に、玉子の黄身が見えている。
 ……う……、うまい!

 これはやみつきになる。カロリーは高そうだが、やめられん。

 今年の中秋(陰暦8月15日)は、10月1日。華人の家庭では、すすきに団子……、ならぬ、月餅にすいかや麺類などがお供えされ、家族が集まり、真夜中、まさに満月が夜空の中天に輝く頃に月餅を人数分に切り分けて食べるのだとか。

 この日が過ぎれば月餅が出回ることもなくなるのだな。それならいっぱい買ってきて、食べられるうちに食べとこう。

 ― 美味しい経験は、いやでも期待値を高める ―

 正直なところ、ムルデカはさほどでもないが、中秋の月(餅)は来年も楽しみだ。


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